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【小説】『導くひと』湯浅真尋 / あらすじ&感想

【小説】『導くひと』湯浅真尋 / あらすじ&感想
みての
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『導くひと』は、湯浅真尋が描く現代日本の暗部と人間の心の奥深くに迫る物語です。テロ事件を起こしたカルト教団を離れた男が、東京から山梨の集落へと移住し、そこで「森の共同体」で育った青年と出会うことで展開されるこの物語は、信仰と狂気、孤立と再生のテーマを巧みに描いています。本作は、読者の固定観念を揺さぶり、新たな視点を提供する力強い作品です。

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みての

年間100作品くらい本を読むサラリーマンブロガー
暇があれば書店・古本店へ行く為、読むペースより買う本の方が圧倒的に多い供給過多状態。
それでも本を買うのが至高過ぎて止まりません。
すごい勢いで積読本が増えていきます。誰か助けてください。

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『導くひと』概要

『導くひと』

四月の岸辺 群像 2021年 05 月号 [雑誌]

タイトル:導くひと(『四月の岸辺』収録・『群像 2021年5月号』掲載)
著者:湯浅真尋
出版社:講談社
単行本:2021年10月20日 発売

あらすじ

「導くひと」:テロ事件を起こした教団を離れ、東京からひとり山梨の集落に移住した男は、子ども時代を「森の共同体」で過ごしたという青年と出会う。彼の眼はあまりに澄んでいた――。

「導くひと」評より――
「信心とは洗脳の牢なのか、篤信と狂信の境は。入れ子構造を折々に反転させる語りが固定観念を揺さぶる。デビュー作からの大脱皮だ」鴻巣友季子氏(朝日新聞「文芸時評」2021年4月28日)

引用元:Amazon

『導くひと』感想

深いテーマ性

『導くひと』の最大の魅力は、その深いテーマ性にあります。カルト教団とその脱会者というテーマを通して、信仰とは何か、狂信と篤信の境界はどこにあるのかを問いかけます。鴻巣友季子氏が述べたように、この作品は読者の固定観念を揺さぶり、新たな視点を提供する力強い語り口を持っています。

複雑なキャラクター描写

一ノ瀬と、「森の共同体」で育った青年・楠木との出会いを軸に、物語は進行します。特に、青年の澄んだ眼差しと、その背後に隠された過去が物語の中で重要な役割を果たします。読者は、彼らの交流を通じて、信仰や洗脳、再生について深く考えさせられるでしょう。

現実感のある設定

湯浅真尋の筆致は、非常に現実感に満ちています。特に、主人公が山梨の集落に移住する過程や、そこでの生活描写は非常にリアルで、まるで自分がその場所にいるかのような感覚に陥ります。さらに、物語の冒頭に登場する「一ノ瀬さんがいなくなりました」という一文は、ミステリーの要素を感じさせ、読者を引き込む力があります。

他作品との共鳴

『導くひと』は、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』や今村夏子さんの『とんこつQ&A』を彷彿させる作品でした。現代社会の中で孤立した、不器用な生き方を描いています。芦澤良子のふぐ屋でのアルバイト話など、現代日本のリアルな日常風景が作品全体に深みを与えています。

おわりに

先日観た映画『わたしの魔境』を思い出しました。名前は名言されていませんが、某カルト教団(というかまんまオウム真理教)を彷彿とさせる設定であり、フィクションと現実の境界が曖昧になる感覚がありました。

芦澤良子の友人、茉莉さんの頑張りと、その報われない現実には心が痛みました。純文学ですが、意外と「えっ」と絶望できる部分があり、心に残る作品でした。

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