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山崎ナオコーラ『手』 / 現代の若者の孤独と繋がりを描く斬新な物語

山崎ナオコーラ『手』 現代の若者の孤独と繋がりを描く斬新な物語
みての
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山崎ナオコーラさんの『手』は、25歳の女性を主人公に据えた斬新な”ファザコン小説”です。おじさま好きな主人公の寅井さんを通じて、現代の若者の孤独感や人間関係の複雑さを鋭く描き出しています。

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『手』概要

『手』

手

あらすじ

ふわふわとした日々が秘める人間存在の切っ先

「私」は25歳。付き合ってきた男性はいつも年上だった。今度のお相手、会社の先輩2人もずいぶん年上、ひとりはお父さんより上なのだ

引用元:文藝春秋BOOKS

25歳の寅井さんは、年上の男性、特に「おじさま」に強い興味を持っています。彼女は「ハッピーおじさんコレクション」というサイトを運営し、様々な年上の男性と関わりを持ちます。同時に、同年代の同僚である森さんとも関係を持ちますが、どちらの関係も深まることはありません。

物語は、寅井さんの日常や過去の回想を通じて、彼女の内面や人間関係の機微を丁寧に描いていきます。

感想・ポイント

斬新なテーマと描写

本作の最大の特徴は、その斬新なテーマ設定です。“ファザコン小説”という帯の言葉通り、主人公のフェチズムは多くの読者にとって理解し難いものかもしれません。しかし、この独特の視点こそが、現代社会の若者の孤独感や人間関係の複雑さを浮き彫りにする効果的な装置となっています。

特に印象的なのは、P.14の“愛情とは、広がるものでは決してなく、移行するものなのだ。”という一文です。この言葉は、主人公の父親との関係性の変化を端的に表現しており、読者の心に強く響きます。

人間関係の機微を捉えた描写

山崎ナオコーラさんの筆力が光るのは、人間関係の機微を繊細に描き出す能力です。主人公と森さんとの関係性の変化が、「手を振る」という描写の微妙な変化を通じて表現されているのは秀逸です。

また、「手」という題名自体が、「人とのつながり」を象徴しているのではないかという解釈も可能で、作品に深みを与えています。

現代の若者の心理を映し出す鏡

本作は、現代の若者、特に20代半ばの心理を鮮やかに描き出しています。主人公の寅井さんの姿を通じて、仕事や趣味に没頭しながらも、どこか現実逃避をしている若者の姿が浮かび上がります。

寂しさを抱えながらも、それに気づかない(あるいは気づこうとしない)主人公の姿は、多くの同世代の読者の共感を呼ぶでしょう。

おわりに

『手』は、一見すると理解し難いテーマを扱いながらも、現代社会の若者の心理や人間関係の機微を鋭く描き出した作品です。山崎ナオコーラさんの繊細な筆致によって、読者は自然と物語の中に引き込まれていきます。

本作は、恋愛や人間関係に悩む若者はもちろん、現代の若者心理を理解したい人にもおすすめの一冊です。斬新な視点から描かれる人間ドラマは、読者に新たな気づきと深い考察を促すことでしょう。

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