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【小説】『クローバーナイト』辻村深月 / あらすじ&感想

【小説】 『クローバーナイト』 辻村深月 あらすじ&感想

『クローバーナイト』

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『クローバーナイト』あらすじ

小さな会計事務所で働く鶴峯裕は
同い年の妻・志保と共働き、
四歳の長女・莉枝未と
もうすぐ二歳になる長男・琉大を保育園に預け、
バタバタの日々を過ごしている。

そんな鶴峯家に、
ママ友、パパ友から子育てにまつわる難題と謎が押し寄せる!

そして事件はとうとう鶴峯家にも――。

裕は数々の謎を解き、
育児の問題も解決して、
家族の幸せを守れるのか!?

引用元:光文社

『クローバーナイト』感想

平成レトロ・思うことが多すぎる!

私が購入したのは文庫本で、
平成レトロでポップなイラストな可愛らしい一冊。

ストーリーは、
ママ友・パパ友の話がメイン。

女性ファッション誌『VERY』掲載作品なので、
前に感想を書いた桐野夏生さんの『ハピネス』『ロンリネス』
似た雰囲気があり、
読みやすかったです。

主人公でありパパの鶴峯裕が私の現年齢と同じ35歳。

同じく子どもを持つ家庭というのもあり、
導入部分となるはじめは特に感情移入しやすかったです。

読んでいくにつれて、
すごく違和感を感じていきました。

この作品の読みやすさも相まって、
止まらず読めるのですが、
色々と思うことがありました。

ある種、楽しんで読めました。

私にとってはホラー

この作品は周囲のママ友など、
子育て家庭の問題を解決していく話で、
『クローバーナイト』の“ナイト”=“騎士”という意味です。

ですが私からすると、
この作品はある種ホラーでした。

そもそも、
鶴峯家の考えや常識が正義というかスタンダードな世界観。

問題を解決するのは確かにホッとできるのかもしれませんが、
現実的に考えると、
いちいち他人の家庭のことに首を突っ込み過ぎ!

ママ友・パパ友付き合い、
自分の気の合う人同士で良くない?
子どもの為?自分たちの為?

なんだろう、
多数決で勝ったら正義、
みたいな歪んだ正義感を感じたんですね。

前半は本当に人助け、
みたいな良い人〜、なイメージなんです。

ですが後半に進むに連れて、
どんどん歪んだ正義を振りかざしている
気味の悪い家族に見えてきました。

結構実際によく見る、
自分たちさえ良ければ他人を傷つけても良い、
みたいな私が好まない考えが凝縮されていました。

表向きはもちろん、
そんな悪意みたいなものは全くありません。

むしろ爽やかな感じ。

基本的には登場人物ほぼ全員が「優しい」です。

ただ、本質的には「優しくない」。

なんだろう、古き良き日本人的な優しさを感じない。

これも時代なのかな、
と年齢の割に考え方が古い私とは合わないのかな、
と思いました。

保活?

保活=子どもを保育園に入れるために保護者が行う活動のことだそう。

世の中には色々な言葉があるんですね。

主人公・裕の母は、
子どもを保育園に入れるのってかわいそう、
という考え方の持ち主。

私もそう思います。

もし自分で子どもを見られるのであれば見てほしい。


本当に共働きでないと生活ができないのであれば、
保育園に入れて働くしか選択肢は無いのかもしれません。

ですが、裕は会計事務所勤務。妻・志保は自営業。

私的にはどちらかの収入で充分に生活できると思うのですが。

そんなこんなで二人の子を保育園に入園済みの鶴峯家。

裕の仕事の顧客である、
兵藤夫婦から相談を受け、
裕・志保揃って会食。

で、夫婦揃って兵藤の奥さんに保活についてアドバイスをする。

これが超違和感!

誰が誰に聞いてんねん!

素人がなんでそんな自信満々にアドバイスできるのか。

保育士(または元保育士)さんの友だちを作って
聞いた方が百万倍為になりますよ?

で、保育園に入園できる方法として、
クレーマーになる
ってそれ自分勝手過ぎません?

自分さえ良ければそれで良いの?
鶴峯家が尊敬できなくなった瞬間です。

あと、“リトミック”の考え方を間違えています。

わざわざ、リトミックをやっています!
とアピールする園はハズレ。

リトミックって保育活動内に
自然と取り入れているのが良い先生・良い園。

自然と子どもが体を動かしたくなっちゃうのがリトミック。

リトミックやりますよ〜、
というのは2流・3流です。

リトミックの意図やねらいが全くわかっていない人ですそれは。

雑誌の「保活」についての記事を参考、
真に受けているのも、
うわ〜…と思いました。

もうこの人たちは手に負えない、
汚染されている。

そう感じました。

一度愛を失った家庭に、
もう一度愛が宿るとも思えませんし。

でも丸く収まった!
解決!
やったねクローバーナイト!

じゃねーよ!

と思いました。

その他諸々溢れ出るもの

基本的にこの作品に出てくる大人って、
自分よがりで子ども第一の家庭がありません。

自分に負担がかかるのが嫌なので、
全部その負担を子どもにかけています。

子どもを道具や足かせにしか描けない、
小説の世界の子どもってなんでこんな扱いなんでしょう。

子ども放置で夫婦で楽しくおしゃべりしていたり、
仕事が忙しいからしょうがない、
みたいな。

もっと子どもを大事にしろよ!

と読んでいてヒートアップしていきました。

元モデルさんの家庭で、
保育園に誕生月の子どもの写真を掲示を拒否しただけで、
物凄く変人扱い。

いや、元芸能人だし、
自分の子どもの写真を掲示していたら、
色々と狙われたり、
その写真をスマホで撮られたり、
SNSで拡散されたり、
ってリスクが多過ぎるでしょ。

なのにこれはおかしい!
解決せねば!
鶴峯家、動きます!

いや、なんで?
結果解決できたから良いですが、
その短絡的な行動、
いる?
要る!?

いちいち詮索して近づいて来る、
私はされたら嫌。

土足で私の領域に入ってこないで、
と思います。

『Chapter_5 秘密のない夫婦』に思うこと

この話を一言で表すと、
裕が義母(妻の母)にギャフンと言わせてスッキリしてしまう話。

義母は昔から娘である志保に指示する性格。

それを受け入れて育った志保が、
裕との結婚で色々と考え方が変わったので、
義母の異常さに気付いていった様子。

で、子どもの言葉の遅れを言われ、
親子バトル勃発。

今まで親子で揉めていたのを、
夫の裕は知らずにいました。

が、ひょんなことで浮気を疑った裕は
妻に聞き出そうとしたら義母との確執を知ります。

だからって、
義母を打ち負かそう、
という方法を取るかね?

結婚って、
自分たちだけ良ければOK、
な本当に今どきな考え方だな、
と思います。

だったら、
もっと内から解決する方法があるでしょう、
と思います。

まず義母と超仲良くなってみる、
みたいな考え方って無いの?

妻の敵は俺の敵!
みたいなジャイアン的思考ですよこれは。

もうね、解決方法が本当に短絡的。
なのにスマートに見せたがるのが気に食わない。

おわりに

思うことが多く、
グワーッと書いてしまいましたが、
楽しく読めました。

また私の発見としては、
小説にしろ、映画にしろ、
子育て系の作品に弱いんだな、
と気付けました。

とにかくこの『クローバーナイト』は
読んでいるうちにいろんな感情が溢れ出てきました。

付箋がビッシリ!

こんなにドップリとハマれる小説ってなかなか無いので、
良い本に出会えました。

特に同年代の家庭を持っている方におすすめしたい一冊です。

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