村田沙耶香さんの小説『信仰』は、現実主義者の永岡ミキと同級生の石毛・斉川が織りなすカルト商法の物語です。現実と信仰の境界を探るユニークな視点から描かれており、村田さんならではの独特な作風が光る作品です。この本を通して、私たちは現実に対する信仰やその意味について深く考えさせられるでしょう。
『信仰』概要
『信仰』
(『文學界2019年2月号』所収)
タイトル:信仰(『文學界2019年2月号』所収作)
著者:村田沙耶香
出版社:文藝春秋
単行本:2022年6月8日 発売
読んだ本:文學界2019年2月号
あらすじ
「なあ、俺と、新しくカルト始めない?」
好きな言葉は「原価いくら?」で、
引用元:Amazon
現実こそが正しいのだと、強く信じている永岡。
同級生から、カルト商法を始めようと誘われた彼女は――。
『信仰』感想
魅力的なキャラクターたち
『信仰』の大きな魅力は、なんといっても個性的なキャラクターたちです。主人公の永岡ミキは、「原価いくら?」が口癖の現実主義者。彼女は現実が正しいと信じて疑わないんですが、同級生の石毛に「新しくカルト始めない?」と誘われ、奇妙な世界に足を踏み入れます。石毛は適当なカルトをでっち上げて信者から金を巻き上げようとする一方、周囲の同級生たちは笑いながらも高級ブランドの食器に夢中になっている。この対比が本当に面白いんです。
多様な信仰の形
この本では、宗教に限らず、さまざまな形の信仰が描かれています。石毛・斉川が作ろうとするカルトや、同級生たちが夢中になる高級食器ブランドなど、信じるものは人それぞれ。自分が信じているものやその意味について改めて考えるきっかけになると思います。
現実主義の影と光
永岡ミキの「現実」に対する強い信仰は、彼女の生活や人間関係に大きな影響を与えます。彼女は自分の考えを友人や妹に押し付けることがあり、時には対立を引き起こします。ミキの現実主義は一見合理的ですが、その背後には他人の価値観を軽視する危険性が潜んでいます。この点が非常に考えさせられます。
おわりに
永岡ミキというキャラクターはとても魅力的です。彼女の現実主義には共感する部分が多く、私自身もかつては現実主義的な視点から物事を見ていた時期がありました。中学時代に2ちゃんねるの掲示板を見るのにハマり、「テレビはやらせだ!」と周りの友達に吹聴していたことがあります。当時の私も、まるでミキのように自分の考えを他人に押し付けていたのだと思います。
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