今回ご紹介する絵本は、
『ごきげんななめのてんとうむし』
作 エリック・カール
訳 もり ひさし
『ごきげんななめのてんとうむし』概要
タイトル:ごきげんななめのてんとうむし
著者:エリック・カール
訳者:もり ひさし
出版社:偕成社
受賞歴:全国学校図書館協議会・選定図書(1999)・日本図書館協会選定図書(1999)
対象年齢:5・6歳~
ページ数:40ページ
発売日:1980年11月
書評
この絵本は、たくさんのメッセージがあるのにユニークな仕掛けがいっぱいで、
面白く、あっという間に読めちゃう一冊です。
機嫌のいいてんとうむしと、
機嫌の悪いてんとうむしが、
ありまきを見つけて朝ごはんにしようとするところから始まります。
ありまきは、葉っぱを食べちゃう虫、
てんとう虫は、そのありまきを食べる虫。
葉っぱにしたら、
てんとう虫がありまきを食べてくれたら
枯れずにすむので大助かり。
という命あるもの全てに通じる食物連鎖の関係です。
で、このありまきを機嫌のいいてんとうむしは
「たくさんあるから わけて たべよう」と言いますが、
機嫌の悪いてんとうむしは全部食べたくて
「いやだ。ぜーんぶ、ぼくのだ。たべたかったら、けんかで、くるか」と言います。
そしたら、機嫌のいいてんとうむしにあっさり「いいよ」と言われちゃって…。
喧嘩は本心ではないので、
「けんかするには おまえじゃ ちいさすぎる」とその場から立ち去ります。
負けを認めた感じを出さずにいたってクールに(笑)
自分の弱さを隠して大きく見せるために虚勢をはる姿は、見ていて滑稽。
やめとけばいいのにひきさがることができずに、もっと強い相手を探しに行っては喧嘩に誘います。
ハチ→くわがた→かまきり→すずめ→ざりがに→スカンク→へび→ハイエナ→ゴリラ→さい→ぞう→くじ
みんな快諾(笑)
そのたびに、
「きみじゃ おおきさがたりない」とか「ちいさすぎる」
と、色々な理由をつけてその場から逃げては、さらに強くて大きい相手へ…。
最終的にははじめの機嫌のいいてんとう虫がありまきを食べている場所に戻ってくると、
ご機嫌なてんとうむしに
「ばんごはんまだだろ?」
「ありまきがすこしのこっているよ」
と言われて、お腹がペコペコの機嫌の悪いてんとうむしは
「あ、ありがとう」って言います。
このやりとり筆者のお気に入りポイント!
何度読んでもここでほっこりします。
説教くさくも説明くさくもなく、実にうまい描写に大人も子ども惹きこまれます。
![](https://newblushingviolet.com/wp-content/uploads/2022/04/tento.jpg)
内容はもちろん素晴らしいのですが、
この本の魅力は、それをさらに素晴らしくする工夫がたくさんされています。
ページのサイズを少しずつ変えて階段のようにめくれるようになっていて、
でてくる生き物も大きくなるのですが、文字も少しずつ大きくなっていくので、
ことばからはもちろん、目からもわかりやすく、
ページの上に描かれたお陽さまと時計が、
時間に会わせて陽の高さを変えるなどの演出があり、
1ページを1時間刻みで進むのですが、
最後の鯨のページは15分刻みで45分かけてしっぽに着くのが、面白かったです。
鯨がめちゃくちゃ大きくて、
てんとう虫がどれだけ小さいのか
対比も自然と感じることができるクオリティーの高さは、圧巻です。
そして、ラストのページはまた1ページのホタルのシーンに戻るので、
さらに1日を感じやすく、何だかどきどき読み進めてきて、
最後ほっこりして、優しい気持ちになる…。
そんな一冊でした。
まとめ
筆者はこの絵本が大好きです。
筆者は、自分に自信がありません。
つい強がったり、大声で怒鳴って相手を威嚇する…、
ってなことも恥ずかしながらありました。
でも、本当は気が小さくて、相手に虚勢を張ったあとはくよくよしてました。
でも、それはバレないように虚勢を張った自分にさらに虚勢を張るの上塗りの繰り返し…。
心が疲れるんですよね。
そんなときに、真っ直ぐな言葉(心)にふれると、
今まで入っていた力が嘘みたいに抜けて、普通になれる(優しくなれる)。
怒ったり虚勢をはったりしないで、ありのままの自分を大事にしよう!と思える1冊です。
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