奥田亜希子さんの小説『クレイジー・フォー・ラビット』は、1995年の小学校6年生の少女、愛衣を中心に繰り広げられる物語です。
ウサギが好きでたまらない愛衣は、同級生の珠紀と一緒にほぼ毎日飼育小屋へ足を運びます。
この小説は、平成の時代背景を鮮やかに描きつつ、友情や成長を丁寧に紡ぎ出した作品です。
『クレイジー・フォー・ラビット』概要
『クレイジー・フォー・ラビット』
(『小説TRIPPER 2018年夏季号』所収)
タイトル:クレイジー・フォー・ラビット(『小説TRIPPER 2018年夏季号』所収作)
著者:奥田亜希子
出版社:朝日新聞出版
単行本:2021年7月7日 発売
読んだ本:小説TRIPPER 2018年夏季号
あらすじ
1995年、小学6年生の愛衣はウサギが好きなあまり、当番でもないのに同級生の珠紀と、ほぼ毎日飼育小屋へ行く(『クレイジー・フォー・ラビット』)。
引用元:紀伊國屋書店
『クレイジー・フォー・ラビット』ポイント・感想
ウサギへの情熱
物語の中心にあるのは、愛衣と珠紀がウサギに寄せる強い愛情です。彼女たちのウサギへの情熱は、単なる趣味を超え、彼女たちのアイデンティティの一部となっています。ウサギの世話を通じて描かれる二人の友情や、日常のささやかな出来事が、物語に温かみを与えています。
平成の世相を映し出す
『クレイジー・フォー・ラビット』は、平成という時代背景を詳細に描いています。当時の有名事件が登場し、読者は当時の雰囲気や社会の動きを感じ取ることができます。これは、読者にとって懐かしさを感じさせると同時に、物語のリアリティを高める要素となっています。
友情の曖昧さと切なさ
友情というテーマが、この小説のもう一つの大きな見どころです。愛衣が感じる友情の不確かさや、友達に対する期待と現実のギャップは、多くの読者が共感できる部分です。友情が終わる瞬間の切なさを丁寧に描いています。
人間関係の複雑さ
主人公・愛衣は、人の嘘を匂いで感じ取れるという少し特殊な能力を持っています。この能力は、彼女が友達や周囲の人々との関係を築く上での障害にもなり、また成長の一助ともなります。嘘や秘密を匂いで感知する愛衣の視点を通じて、人間関係の複雑さや、真実と嘘の境界が描かれます。
感想
『クレイジー・フォー・ラビット』を読んで印象的だったのは、物語全体に漂う平成の雰囲気を懐かしく感じました。隣町に行くことが冒険だったり、友達に誘われて内緒で行動したりする描写は、「あるある」と共感できるものでした。この作品は、当時の社会や文化を知らない若い読者にも、新鮮な驚きと共感があるのではないでしょうか。ぜひ手に取って、愛衣と珠紀の物語を追体験してみてください。
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