〈作品情報〉
タイトル:凍りのくじら
著者:辻村深月
出版社:講談社
出版年:2005年(新書)
ページ数:576ページ(文庫本)
『凍りのくじら』あらすじ
藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、
その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、
夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う1人の青年に出会う。戸惑いつつも、
他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。
皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき――。
引用元:講談社BOOK倶楽部
『凍りのくじら』感想
⚠この記事には物語のネタバレが含まれます。
気になる方はご注意ください。
『ドラえもん』?
まず目次を読むと、
『ドラえもん』でおなじみだったり、
そんな道具があったんだ、
というようなタイトルが並んでいます。
以前、別の著者の方の作品で、
某国民的人気アニメを題材にした小説を読んだことがあります。
ただその作品は、
アニメ本編をただただ下品にしただけで
全然面白くなく、
がっかりした覚えがあります。
もしかしてこの作品も、
『ドラえもん』を題材にした、
いわゆる“ぼくが考えたさいきょうの『ドラえもん』”
みたいな話だったらどうしよう、
と不安でした。
文庫本576ページ。
約2cmの厚みです。
これで面白くなかったらどうしよう、
と思いましたが読んでみるとさすがは辻村深月さん。
そんな陳腐な作品ではありませんでした。
ただ、1点だけ注意点があるとすれば、
漫画・アニメ『ドラえもん』好きにこそ読んでもらいたい作品だな、
と思いました。
私と『ドラえもん』
物心ついた頃には大山のぶ代さんが声を当てていた
アニメ『ドラえもん』が毎週金曜日に当然にように毎週、
放送されていたので毎週楽しみに観ていました。
漫画だと1冊だけ持っていました。
祖母に買ってもらった『ドラえもん5 [むかし話編] (小学館コロコロ文庫 ふ 1-5) 』
という物。
第4話『おばあちゃんのおもいで』が好きでしたね。
私の祖母がのび太のおばあちゃんみたいに、
なんでも褒めてくれるし優しい。
すごく自分の祖母と重なるところがあり、
“おばあちゃんっ子”だった私は好きな話でした。
『ドラえもん』との距離感はそんな感じです。
SF
藤子・F・不二雄先生の
“SF=すこし・ふしぎ”という言葉がが好きな
主人公の高校生:芦沢理帆子。
周りにいる人たちに“すこし・不揃い”
“少し・フリー”など、ニックネームのようにつけるのが趣味。
そして思春期あるあるで、
俯瞰して周りを見ている(つもり)。
誰にでもこの中二病みたいなのってあるものなのかしら?
私も思春期ばりばりの時は周りの友だちや親を見下していたな、
と思い出しました。
当時『ワンピース』『ハンターハンター』などのジャンプ漫画が
めちゃくちゃ流行っていましたが、
私の中で漫画を読むのは小学生まで。
みたいな無駄なこだわりがあり、
その代わりゲーム雑誌(ファミ通や電撃PSなど)ばかり読んでいました。
結局趣味の方向性でいうと同じような感じですが、
何故か見下していましたね。
青春→えっ?
そんな青春時代を思い出すことが多かったのですが、
後半になるにつれて不穏な気配が。
まず、元カレ:若尾のストーカー化。
これは理解できます。
勢いで言って別れてしまう、
けど彼氏的には止めて欲しかったし、
今でもお互い思い合っている気になっている感じ。
リアルだな、と思います。
そんな感じじゃなかったのに、
髪の毛を金髪に染めてみる。
分かります。
ただ、実際に小学生の子どもを誘拐して
下手すりゃ殺人事件ってレベルの事件まで起こす。
それはちょっとやりすぎじゃない!?
頭は良くないにしても、
こういう方向性に動けるような性格じゃなくない?
と驚きました。
この事件と同時進行で、
高校の先輩:別所さんの謎が変。
まさかの別所さんが理帆子の…
というまさかのオチ。
なんじゃそりゃ!!!
途中までは
理帆子のちょっと変わっているけれども共感できる、
青春小説を読んでいたのに、
急にサスペンス→ホラーっていう
謎のエッセンスが出てきて「えぇ~…」という気持ちでした。
ただ、『ドラえもん』が好きだとより、
物語に没入できて楽しめると思うので、
『ドラえもん』好きにこそおすすめしたい作品です!
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