『丸の内魔法少女ミラクリーナ』
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』あらすじ
単調でストレスフルな日々をキュートな妄想で脚色して何が悪い!
さまざまな世界との対峙の仕方を描く、衝撃の短編集!
村田沙耶香ワールドの神髄を堪能できる4篇を収録。■「丸の内魔法少女ミラクリーナ」
OLの茅ヶ崎リナは、日々降りかかってくる無理難題も、魔法のコンパクトでミラクリーナに“変身”し、妄想力を駆使して乗り切っている。そんなある日、元魔法少女仲間のレイコが、恋人の正志と喧嘩。よりを戻すためには「レイコの代わりに魔法少女になること」を条件に出すと、意外にも彼は魔法少女活動にのめり込んでいくが……。■「秘密の花園」
「見ているだけでいいから」と同じ大学の早川君を1週間監禁することにした千佳。3食昼寝付きという千佳の提案に、彼は上から目線で渋々合意した。だが、千佳の真意は、小学3年生からの早川君への初恋に終止符を打つため、「生身の早川君がいかにくだらない男か」を目の当たりにし、自分の中の「幻想」を打ち砕くことにあった――。■「無性教室」
髪はショートカット、化粧は禁止、一人称は「僕」でなければならない――。「性別」禁止の高校へ通うユートは、性別不明の同級生・セナに惹かれている。しかし女子であろう(と推測される)ユキから、近い将来、性別は「廃止」されると聞かされ、混乱する。どうしてもセナの性別が知りたくなるが、セナは詮索されるのを嫌がり……。■「変容」
引用元:角川書店
母親の介護が一段落し、40歳になって再び、近所のファミレスで働きはじめた真琴は、世の中から「怒り」という感情がなくなってきていること、また周囲の人々が当たり前のように使う「なもむ」という言葉も、その感情も知らないことに衝撃を受ける。その矢先、大学時代の親友から「精神のステージをあげていく交流会」に誘われるが……。
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』感想
丸の内魔法少女ミラクリーナ
個人的に一番面白かったのはなんといっても表題作、
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』です。
小学校3年生から今なお魔法少女として活動している、
という設定を自分でしてなんとか激務の中、
過ごしている現在36歳のOL魔法少女。
この設定からして面白いに決まっていますよね!
こういうジンクス?的なことって、
案外子どもの頃から続けている人って一定数存在していそう。
DVを受けている友だち(元マジカルレイミー)の為に、
ミラクリーナが立ち上がる!
そんな話なんですが、
ひょんなことからそのDV彼氏が
2代目マジカルレイミーを襲名することに。
そこから魔法少女とはなんなのか、
と考えさせられる話。
昔、戦隊ヒーローの番組や、
ジャッキー・チェンなどのアクション映画を観た後の、
なんにでもなれそう、
何でもできそう、
そんな気分になっていたのを思い出しました。
また、プロレスやK-1を観ると、
家でシャドーボクシング風なことをする、
そんな強いものへの一時的な憧れ。
これを大人になっても続けていたのが今作の主人公、
茅ヶ崎リナです。
こういう大人がいてもいいじゃない。
『コンビニ人間』とはまた違う話なんですが、
同じ方が書いたんだな、
というのがすごく分かるのは文体?なんでしょうか。
ぶっ飛んでいるけれど面白い作品でした。
秘密の花園
憧れの人を監禁したい。
確かに気持ちとしては分からなくはありません。
が、実際に自宅に監禁しちゃったのが
大学生の主人公・千佳。
自分だったら監禁、
というよりかは覗き見してみたい気分になります。
監禁して欲望のままにどうこうする、
というわけではなく、
あくまでも観察したい、
というのが可愛いところ。
最後は自分の中のけじめ?
憧れの人との自分の中での別れを体験し、
次の恋愛へと行こうとするのが、
律儀というか、
真面目なところ。
している行動としては全然真面目ではありませんが。
通過儀礼、ステップとしての疑似恋愛。
そんな話でした。
無性教室
男女の区別が無い高校。
全員同じような髪型、
制服。
しかも性別を隠さなければいけない。
自分がこんな学校生活だと絶対に嫌です。
確かに、
どちらかわからないドキドキはあるのかもしれませんが、
個性あってこその友達付き合い、
恋愛などの学校生活だと思います。
こんな窮屈な学校生活は、
とにかく私には無理ー!
と思いました。
変容
『怒り』という感情が無いのが普通な時代になっている中、
義母の介護で世の流れからしばらく離れていた主婦・真琴の話。
久しぶりの社会復帰でファミレスのパートで、
今の若者には「怒り」という感情が無い、
ということに気付きます。
そしてファッションと同じで、
人間の性格にも『流行』があることを知ります。
実際、若者言葉、みたいな感じで、
その世代以外には伝わらない言葉って結構ありますよね。
そこを膨らませたような話。
個人的には、『エモい』が全然理解できません。
まさにこの話の主人公などの『なもむ』みたいな気分。
確かに、『怒り』が無い世界に生きられると、
もっと人生、のびのび生きられそうだな、
と思いました。
おわりに
4編とも面白かったですが、
やはり中でもぶっちりぎりに面白かったのは
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』です。
苛立ちや滑稽さなど、
いろんな感情がいちいち心にヒットしました。
厨二病経験者には特におすすめしたいです。
2023年2月24日に文庫本が発売されているので、
より手に取りやすいかと思います。
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