今回ご紹介する作品は『わたしの良い子』です。
家族愛を感じる良い作品です!
『わたしの良い子』概要
作品情報
タイトル:わたしの良い子
著者:寺地はるな
出版社:中央公論新社
発行年 単行本:2019年
文庫本:2022年
あらすじ
三十一歳独身、文具メーカーの経理部に勤める椿は、出奔した妹の子ども・朔と暮らすことに。毎日の子育て、更に勉強も運動も苦手で内にこもりがちな朔との生活は、時に椿を追いつめる。自分が正しいかわからない、自分の意思を押しつけたくもない。そんな中、どこかで朔を「他の子」と比べていることに気づいた椿は……。
引用元:Amazon商品ページ
〈解説〉村中直人
主な登場人物
小林 椿…主人公。文具メーカーの経理部に勤める31歳。甥の朔を育てている。
鈴菜…椿の5歳年下の妹。椿に子(朔)を預け沖縄に。
朔…鈴菜の子。椿と住んでいる。
『わたしの良い子』感想
読んだきっかけ
私と寺地はるなさん作品との出会いは『架空の犬と嘘をつく猫』。今まで読んだことのない読後感が良かったんですよね。そこから寺地はるなさんの作品が気になり、買いました。
この作品を買う決定打となったのは裏表紙のあらすじの“文具メーカーの経理部に勤める”というところです。文具好きとして、文具メーカーの話だ!喜んで手に取りました。あらすじを読むとわかるのですが、全然そこは主題ではないので文具アイテムが出てきません。
学んだこと
- さまざまな家族の形・愛の形を知ることができる。
- 「常識」「普通」がいかにくだらないか。自分の中の芯の大切さ。
- 幸せは自分で作るもの・掴みとるもの。
朔のかわいさ
本作品の単行本版の帯には『女性共感率No.1 寺地はるなの意欲作!』と書いているそう。確かに、主人公・小林椿の甥っ子、朔くんのかわいさに共感できる女性は多そう。不器用な男子って超かわいいですよね。子育てエピソードにも「わかるー!」と共感できる方が多いと思います。
引用&感想
子供の寝顔が数割増しでかわいいのは、見ている側の安心感と余裕によるものだ、きっと。
P.8
子どもの寝顔って可愛いですよね。ただ、こういう気持ちを言葉で表現できるのがすごい。分かっちゃいるけど書けないよ私には。
ノリの悪い人間は集団生活には向いていない。
P.24
いやまさに私じゃん!と思って集団生活にそんなに向いていないの?と気になりました。ノリが悪くても集団生活を送っていますが、駄目なの?と少し不安になりました。
不自由なことはいっぱいある。悩むことも。でも不幸じゃない。
P.80
椿が朔を預かり育てていることで、彼氏との結婚を諦めているのではないか、と父親に心配されたことに対しての言葉。個人的に本作で一番グッときた言葉。たしかに「不自由・悩み=不幸」じゃないですよね。少し複雑な気持ちって、人は簡単にまとめようとイコールにしちゃうことが多いんですよね。
私の場合、仕事のお客さんにクレーム気質だったり、ちょっとややこしいなという方がいます。同僚など周りの人からは嫌いなお客さんの相手、大変だよね、みたいな感じで受け取られることが多いです。でも私としては全然違うんですよね。そのクレームなどに「大変だな」と思うことはあってもその人のことが嫌いにはなっていないんですよ。むしろ逆で、そこまで頼ってもらえるんだ!くらいの手がかかる人だなー、なんとかしましょう!って感じなんですよね。でもそれが伝わらない。一言「クレーマー」で片付けられるのはなんだかなー、という気持ちなんですけどわかりますかね?その気持ちを思い起こさせるエピソードでした。
「あ、私の考える結婚のメリット、ひとつあった」
P.101
「なんで結婚しないの?って訊かれなくなること」
椿の同期・穂積さんの話。
結婚ってそんなに大層なことですか?んなこたーない。ただ好きな人と一緒になる(戸籍上も)ってだけだよ?と言いたい。まあ、手続きなど色々大変なことはあるでしょうが。良い人が見つかれば自然とそうなることであって、無理やりどうこうするものでもないし、もっと結婚に素敵な夢を見てもいいんじゃない?と穂積さんに言いたい。
他人の失敗を横目に「わたしはまだあそこまでじゃないから」と胸をなでおろす行為は卑しい。
P.108
私はよくやってしまっている……。他人と比べる必要はないのに、つい比べてマウントを取りたがる。気をつけないと。
わたしがいつまでたっても覚えられない怪獣の名を、まるで競い合うように口にしている。
P.113
椿の彼氏・高雄と朔のやりとり。うちの子どもが絶賛ポケモンにハマり中。初代のポケモン世代である私もついていけないほど、ポケモンの名前や技を覚えています。子どもの記憶力の良さや探究心に驚きます。
「その、さりげなくちょっと良いこと言ってくる感じ、聞いててほんとにいらいらする。そんなにみんなにほめてほしい?」
P.191
妹・鈴菜が姉・椿に放ったセリフ。いや、この癖私めっちゃあります。自分の常識の押し付けというか、自分の中の不正解を認めない感じ。特に妻に対してすっごくある。こうして客観的に見られるとすごく自分の行動に反省します。
「他の子みたいに」できなくったっていい。
P.210
比較することって本当によくないと思ってはいるものの、なかなかできていない現実。しっかり意識していきたいと思います。
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