第168回芥川賞受賞作!井戸川射子・著『この世の喜びよ』をご紹介します。
『この世の喜びよ』概要
『この世の喜びよ』
タイトル:この世の喜びよ
著者:井戸川射子
出版社:講談社
単行本:2022年11月20日発売
読んだ本:「文藝春秋 2023年3月特大号」
あらすじ
娘たちが幼い頃、よく一緒に過ごした近所のショッピングセンター。その喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。
二人の目にはきっと、あなたの知らない景色が広がっている。あなたは頷いた。こうして分からなかった言葉があっても、聞き返さないようになっていく。
引用元:講談社BOOK倶楽部
『この世の喜びよ』感想
「あなた」
もうこの感想は出尽くされているのであえて私から言う(書く)こともないと思うんですけど触れておきます。「あなた」という二人称代名詞が斬新。本当にこの作品の特徴と呼べるんじゃないかしら。
はじめ「あなたは……(うんたらかんたら)」と読んで「私に語り掛けているの?」と不思議な感覚でしたが、私は男性だし、ショッピングセンターの喪服屋さんで働いていないよ?と不安になりました。
このまま読んでいいんだよね?と思いながら読み進めるとようやく、なんでかはわかりませんがそういう作品なんだね、と気付けました。
あと「あなた」について思うことはTRPG(テーブルトークRPG)です。詳しくはググってみてください。私はTRPGをしたことは無いのですが、テレビゲームのRPG(CRPGとも言う)の元となったもの。こういうので選択のときに呼ばれるのが「あなた」というイメージがあります。
で、そのTRPG風な雰囲気のある3D視点ダンジョンRPG『世界樹の迷宮』で初めての宝箱を見つけた時に“あなたはこの宝箱を開けてもよいし、開けなくてもよい”みたいな選択肢が出るんです。ゲームで「あなた」って言われるのがなんか斬新だったんですよね。宝箱って考えもせずただ開けて当然!な物だったので「え?選択できるの?どうしよう」と悩み、自分で選択するということに困惑しました。どうやら私が今までプレイしてきていたのはロールプレイングゲームではなく、レールプレイングゲームだったようです。結構衝撃だったんですよね。ま、全然『この世の喜びよ』と関係ないんですけど。
あとTRPGが出てきたついでに語らせていただきたいのが、Windows用フリーゲームのTRPG風ゲーム『CardWirth』。何がすごいかって、有志の制作者によるシナリオをダウンロードして楽しめるゲームがインターネット黎明期(1998年)から存在していたってところです。キャラメイクできる(自分で画像を書いても良し、素材サイトからお借りしても良し)ので当時としてはとても自由度が高いゲームでした。そしてなんといってもシナリオですよね。有志の方々が作成したシナリオが無数にあります。また、道具や魔法・技などもオリジナリティ溢れるものがたくさんあるので、自分が思うキャラ作りができます。RPG玄人だけでなく、オリジナルキャラでキャッキャウフフしたい方にも超おすすめなゲームです。というかフリーゲームなのでもちろんなんですが、有料シナリオ(現存するのか?)でない限りは完全無料!ヤバくないですか?しかもダウンロードゲームなのでプレイ中に広告なんて一切つきません!今だったらタブレットのWindowsエミュレータとか使ったらタッチでプレイもできちゃうんじゃない?それ10年前に欲しかったっす!切実に欲しくて当時twitter(前のアカウント)でめっちゃつぶやいていたじゃないですかー。懐かしす。
ショッピングセンター
私、大学時代にショッピングセンターでアルバイトをしておりました。しかも、向かいにゲームセンター。でもバイト先は古着屋。喪服じゃないですけど服なので結構近くないですか?ちなみに隣はダイソー(100均)。その当時のエピソードは1個上の女性の先輩がめっちゃ仲良くしてくれてバイトの給料が出たら近くのちょっと高いお寿司屋さんに食べに行くってのがお決まりでした。ただ、土日しかバイトができなく、給料は月に3万円くらい。すぐ無くなってた。というか当方、学生時代から今までお金持ちだったことがございません。なんか常にお金ないんですよ。小金ばっか使っていつの間にかお金が無くなっているタイプ。今でも本ばっかり買って妻に呆れられる日々。年末年始にちょこっとまとめて本をブックオフへ持って行き、1700円分ほどポイントをゲットしました。しかし1/20現在、残り1000ポイント程。あとクーポンや現金(お小遣い)でも買っているでしょ。メルカリAmazonも併せたら今月だけで3000~4000円くらい使っている計算になるんだが。メルカリとAmazon分は報告している(家に届くからね)けどブックオフとかで買い集めている分に関してはもう報告できない……!積んでるからバレてるけど!
それはいいんですが、アルバイト時代の向かいのゲームセンターのお兄ちゃんたちもよくしてくれてたなぁ、何歳か上のお兄さんたちでよくかまってくれていました。みんなイケメンばっかだし背高かったし、制服もなんかカッコ良かった。本作品にも出てきたようなシャツにベストにスラックスみたいな。なんでこういう小さめのゲームセンターの制服って似てる感じなんだろう。ほとんど行ったことないけどパチンコ屋もそんな感じだっけ。
懐古厨な「あなた」
絶賛アラフォーな私としては、昔の思い出をついつい語りたくなってしまうようになってしまいました。10代・20代の頃はそんな大人に対して露骨に嫌な顔をしていたと思います。しかし、大人側としては過去にドはまりしたような話題となると、おそらくクソみたいな雑学を語りたくなるんですよね。まぁ、私の場合普段の会話でそんなピンポイントで語れる話題が出ることはほぼ無いんですけどね。
おわりに
私のアルバイト経験と少し似ている部分があったので楽しんで読めました。とにかく不思議な感覚を味わえたというのが大きな感想です。自分の気持ちをぶつけたいのにうまく伝わらないもどかしさ。最終的にはうまく伝わってみんな笑顔に、というわけにはいかない現実感。そのリアルな感覚も味わえる作品でした。
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