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片思い&リアルな恋/ 綿矢りさ『勝手にふるえてろ』

片思い&リアルな恋 綿矢りさ『勝手にふるえてろ』
みての
みての

綿矢りささんの小説『勝手にふるえてろ』は、現代社会を生きる女性の内面を鋭く描き出した作品です。26歳のOL、ヨシカの恋愛模様を通して、読者の心に深く響く人間ドラマが展開されます。本作は第27回織田作之助賞候補作にもなり、後に映画化もされた話題作です。

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『勝手にふるえてろ』概要

『勝手にふるえてろ』

勝手にふるえてろ (文春文庫)

タイトル:勝手にふるえてろ
著者:綿矢りさ
出版社:文藝春秋
読んだ本:文庫本 2016年6月10日 第5刷

あらすじ

私には彼氏が二人いる──中学時代からの不毛な片思いの相手と、何とも思ってないのに突然告白してきた暑苦しい同期。26歳まで恋愛経験ゼロ、おたく系女子の良香は“脳内片思い”と“リアル恋愛”のふたつを同時進行中。当然アタマの中では結婚も意識する。しかし戸惑いと葛藤の連続で……悩み、傷つき、ついにはありえない嘘で大暴走!? 良香は現実の扉を開けることができるのか? 切なくキュートな等身大の恋愛小説。

引用元:Amazon

『勝手にふるえてろ』感想

叶わぬ恋と現実の狭間

ヨシカは中学時代から想いを寄せる”イチ”への片思いを続けながら、同僚の”ニ”からのアプローチに戸惑います。叶わぬ恋と現実の恋の間で揺れ動くヨシカの姿を通して、綿矢りささんは現代人の孤独や不安、そして成長の過程を鮮やかに描き出しています。

繊細な心理描写

綿矢りささんの真骨頂とも言える繊細な心理描写が本作でも存分に発揮されています。ヨシカの内面の揺れ動きが、読者の心に直接響くような鋭い洞察力と表現力で描かれています。また、本作は単なる恋愛小説にとどまらず、現代社会に生きる若者たちの不安や孤独感を鋭く描き出しています。SNSの普及や価値観の多様化が進む中で、人々が抱える「つながりたい」という欲求と「傷つきたくない」という恐れの間での葛藤が、ヨシカの行動を通して巧みに表現されています。

成長物語としての側面

『勝手にふるえてろ』は、ヨシカの成長の物語でもあります。自分の感情に正直になることの難しさや、他者との関係性の中で自己を確立していく過程が、時にコミカルに、時に切実に描かれています。ヨシカが自分の「エゴ」と向き合い、現実の人生を生きる決意をする様子は、読者に勇気を与えるものとなっています。

おわりに

『勝手にふるえてろ』は、現代を生きる私たちに「自分の感情に正直に向き合うこと」の大切さを教えてくれる作品です。ヨシカの姿を通して、読者は自身の内なる声に耳を傾け、時に「勝手にふるえる」勇気を持つことの重要性に気づかされるでしょう。

綿矢りささんの鋭い洞察力と繊細な筆致が織りなす本作は、単なる恋愛小説の枠を超えて、現代社会を生きる人々の心の機微を鮮やかに描き出しています。読了後、読者は自分自身の内面と向き合い、新たな一歩を踏み出す勇気を得ることができるはずです。

『勝手にふるえてろ』は、綿矢りささんの作品の中でも特に印象的な一作であり、現代文学の傑作として長く読み継がれていくことでしょう。

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