第60回文藝賞受賞作『無敵の犬の夜』をご紹介します!
『無敵の犬の夜』概要
『無敵の犬の夜』
タイトル:無敵の犬の夜
著者:小泉綾子
出版社:河出書房新社
単行本:2023年11月22日発売
読んだ本:「文藝 2023年冬号」
『無敵の犬の夜』あらすじ
「この先俺は、きっと何もなれんと思う。夢の見方を知らんけん」北九州の片田舎。中学生の界は、地元で知り合った「バリイケとる」男・橘さんに心酔するのだが――。第60回文藝賞受賞作。
【驚異の”満場一致”受賞!】
選考委員 角田光代・島本理生・穂村弘・町田康 絶賛!!「この現実世界の中心にかかわりたくてあがいていながら、まったくかかわることができずにいる、絶望と意識もされない絶望が、絶妙に描き出されている」角田光代
「思春期の葛藤は時に人を殺したくなるほど肥大する。その切実さが丁寧に描かれている」島本理生
「主人公の世界と自分の直結を夢見る感覚はテロリスト的」穂村弘
「すべての人物が衝動に突き動かされて瞬間をマジで生きる様が描かれて、この作者の世界観、人間観が広く深いものであることが知れる」町田康「任侠映画」「坊っちゃん」はたまた「少年漫画」!?
――無謀で泥臭くも美しい“鉄砲玉文学”、爆誕!「強くなったらもう誰も俺をバカにしない。恐れられ尊敬される世界。最高やん。きっといつか、もしかしたら」
引用元:河出書房新社
北九州の片田舎。幼少期に右手の小指と薬指の半分を失った男子中学生・界(かい)は、学校へ行かず、地元の不良グループとファミレスでたむろする日々。その中で出会った「バリイケとる」男・橘さんに強烈に心酔していく。
ある日、東京のラッパーとトラブルを起こしたという橘さんのため、ひとり東京へ向かうことを決意するが――。
どこまでも無謀でいつまでも終われない、行き場のない熱を抱えた少年の切実なる暴走劇!
主な登場人物
『無敵の犬の夜』感想
イキりたい年ごろ
中学時代ってイキりたい(調子に乗りたい)年ごろですよね。小学生から考えるといっきに大人になった気分になりますもんね。実際、行動範囲が広がりますし、自分で選択できることが増えて自由度マシマシな生活に突入したって覚えがあります。自転車がマウンテンバイクからママチャリに変わったことさえ誇らしかったです。というか中学一年か小学六年くらいのときにマウンテンバイクを乗っていて、下級生になんか馬鹿にされて恐くなってママチャリをねだった覚えがあります。今となってはそんなんで心変わりするなよ、って思いますけど。今でも妻など、身近にいる人の助言よりも他からの助言の方を真に受けちゃうタイプ。で、妻に報告すると、「前に私が言ったよ」と言われる日々。身近で見てくれている人を信じろ私。考えると今でも調子に乗っているのかもしれませんね。
行動力
ただ、この作品の主人公の良いところって、純粋なままイキっていて行動力があるところだと思います。確かに、この時期ってなんか無駄に行動力がありません?私の場合、とあるアイドルのおっかけとまではいきませんが、発売日のインストアライブを毎回見に行っていました。でそのあとの握手会にも参加。一人で。今ではそんな行動力無いです。行くとしても妻・子ども誘って行くって言ったら行くくらい。なんだったんだろう、あのエネルギーって。服に興味を持ったのが中学三年のときで、自分で買いに行くようになったのも中学時代。あとどこに行ってただろう。とにかく、一人でも行動することが各段に増えました。
ふわふわ
確かに行動力マシマシになって自由度が増えました。ただ、自由度が高くなり過ぎたからなのか思春期って不安定な時期だからなのか?そのへんは不明ですが、「歩き方ってこれで合ってる?」というふわふわ感を感じていた時期でもあります。なんか地に足ついていないっていう感覚。高校生になるとそんなの無くなっていた記憶があるので、この時期独特な不安定な気持ちだったのかもしれません。ワクワクとドキドキが交差しまくっていたのかしら。
そういや中学時代、友だちと繁華街の映画館へ『少林サッカー』を観に行った帰り、駅まで戻る道が分からなくて前の人について行った結果、服屋のキャッチのお兄さんたちにつかまり店内へ。無理やり服を買わされそうになって恐かった思い出があります。一緒に行った友だちがハッキリ断れるタイプだったのですぐに開放されましたが、服をはぐられ、中に着ていた肌着を見られてニヤニヤされたのが気持ち悪かったのと恥ずかしかったのを覚えています。何にでもなれるような、全然なれないような本当にふわふわしていた時期だなぁ。今でも何かになれているかはわかりませんけど。使命のように本を買い続けている36歳男ですが何か?
おわりに
自分の昔というか黒歴史というか、中二病を感じました。誰しもこういう時期ってあるよねって記憶が呼び起こされる危険な話。だけどこの主人公の男の子・界はすごい。危険過ぎる。誰か途中で止めてやってくれ!そう思わずにはいられない作品でした。
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